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ブレイキンの驚異的な記録や科学的に
検証されたデータを掲載!
新たな視点でブレイキンをもっと好きになる!

SCIENCE

FICTION

RECORD

ADVISER

望月修 モチヅキ オサム

Be-Link代表、東洋大学名誉教授

研究対象
生物流体工学 / スポーツ物理

工学博士。北海道大学工学部機械工学科 助教授、東洋大学理工学部 教授を歴任。2022年より現職。主な著書に「図解 流体工学」(朝倉書店)、「眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話」(日本文芸社)、「おもしろい! スポーツの物理」、「オリンピックに勝つ物理学」(ともに講談社)などがある。

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SCIENCE FILE No.1

試合中にダイナミックかつアクロバティックな動きを披露し続けるブレイキン。パリ2024オリンピックでは、1試合に1人1分×2~3ラウンド演技し、勝ち上がれば最大4試合行うことも…! そんなブレイキンの消費カロリーを、身近な動きやスポーツと比較し、どれほど“キツイ”スポーツなのか検証してみましょう!

ブレイキンの「運動強度」ってどのくらい?

運動による消費カロリー(kcal)は、「METs×体重(kg)×時間(h)×係数1.05」の計算式で求められます。ここで登場する「METs」とは、「体を動かしたときに感じるきつさ」を表す単位のこと。METsの値(※1)は年齢や体格によって数値が変わることはなく、たとえば「座って安静にしている」状態は1.0METsに相当します。ブレイキンの正確なMETs値はまだ研究が進んでいないため、さまざまなダンスのMETs値から推測してみると、ブレイキンは7.0 METs程度と仮定できます。

ほかのスポーツと比較すると、卓球が4.0METs、野球が5.0METs、バスケットボールが6.0METsとされているので、7.0METsのブレイキンはそれよりも運動強度が高く、きついことがわかります! ダンス競技の中でも、ジャンプや回転技を駆使するブレイキンは、さらに運動強度が高い可能性も秘めていますね!

  1. 安静時のエネルギー消費量(代謝量)を1.0METsとし、それと比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強さを表す。

手で全体重を支えるパワームーブは膨大なエネルギーを消費していた…

では、ブレイキンのトリックの中でも、回転技を駆使するパワームーブにフォーカスして「消費カロリー」を見てみましょう。回転は「始動」と「停止」の際に消費するエネルギーが大きく、さらに、逆立ちや手を軸に体重を持ち上げた状態での回転には、より大きなエネルギーを消費します。

あるトップブレイカーは、国際的な試合に出場した際にエアートラックストーマス(フレア)などを織り交ぜながら、手を軸にして9秒間で15回の回転技に成功! 彼の体格を基に計算すると、9秒間で3.15kcal消費したことに。これは、彼が9秒間野球の素振りをしたときの約3倍の消費カロリーに匹敵します! 瞬間的にこれだけのカロリーを消費しているブレイカー、恐るべしですね!

  • 数値や分析はあくまで仮説に基づくものであり、現実の値とは異なる可能性があります。
【出典】
協和キリン.“健康づくりのための身体活動基準”.晴れやかソライアシスライフ. 東京医科大学 皮膚科学分野特任教授 大久保ゆかり先生.
(参照:2025-5-9)

公益財団法人長寿科学振興財団. “健康づくりのための身体活動基準”. 健康長寿ネット .2019-2,
(参照:2025-5-9)

(独)国立健康・栄養研究所.“改訂版「身体活動のメッツ(METs)表」”.国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所.2012-4-11,
(参照:2025-4-24)

厚生労働省.“生活活動のメッツ表・運動のメッツ表”.健康ニッポン21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~.2023-8,
(参照:2025-4-24)

公益財団法人長寿科学振興財団.“趣味:ダンス”. 健康長寿ネット .2019-2,
(参照:2025-5-9)

SCIENCE FILE No.2

回転の方向が上下左右へと高速で移り変わるパワームーブ。初心者がうかつに挑戦すれば、三半規管がびっくりしてすぐに目が回ってしまうようなトリックの連続でも、なぜブレイカーは目が回らないのでしょうか? ブレイカーが試合中に何度もパワームーブを成功させられる理由や、驚きの回転速度に迫ります!

ブレイカーは回転を繰り返してもなぜ目が回らない?

「目が回る」とは、眼球が上下左右に動く「眼振」という状態のことを指します。耳の奥の三半規管内の「平衡感覚や聴覚に関係しているリンパ液の流れ」を脳が感知し、回転していると判断。すると、視線を元に戻そうと眼振を起こします。

では、試合中に回転を繰り返すブレイカーはなぜ眼振を起こさないのでしょうか? それは、練習を重ねることで、リンパ液が流れても「大丈夫!」と脳に思わせているから。さらに、視線を一定方向に固定したまま頭を素早く回転させる「スポッティング」の技術や、体の回転軸がブレないようにすることで内耳への刺激を安定させることも重要です。つまりは、血のにじむような練習をこなすことによる“慣れ”なのです! 回転に強い体が出来上がっているブレイカーなら、遊園地で回転系のアトラクションに乗っても全く酔わない! なんてことになりそうです。

パワームーブの瞬間的な回転数をみてみよう!

実際の試合を例にとってみましょう。とある試合では、ブレイカーが7秒間に12回連続でヘッドスピンウインドミルを応用した回転系のトリックを披露しました。計算すると、1秒間に1.71回、1分間に約103回の回転を行うペースであることが分かります。この数字を、走行中のプロロードレーサーの平均的なペダル回転数とされる80~100rpm(※1)と比較すると、瞬間的にとは言え、同等の回転数を叩き出していることに! ブレイカーは、これほどの負荷がかかる回転技を試合で繰り出しているのです。

  1. rpm=回転数の単位。1rpm=1分間に1回転することを表す。
  • 数値や分析はあくまで仮説に基づくものであり、現実の値とは異なる可能性があります。

SCIENCE FILE No.3

パワームーブで回転技をしている最中、ブレイカーには非常に大きな遠心力がかかっています。熟練のブレイカーでも、うまく遠心力を使えないと吹っ飛ばされることもあるそう。一体なぜ、ブレイカーは大きな遠心力に耐えることができ、豪快な回転技を何度もキメられるのでしょうか?

遠心力は実際の力ではなく「見かけの力」だった!?

皆さんは遠心力と聞いて何を思い浮かべますか? 遊園地のコーヒーカップや、振り回してもこぼれない水の入ったバケツをイメージする人が多いかと思います。遠心力は、回転に伴い外に引っ張られているように感じる力ですが、その正体は回っている人や物だけが感じる“偽物の力”! 実は、まっすぐ進もうとする力(慣性)によって、外に引っ張られるように感じているだけなんです。 遠心力は、質量(kg)×回転中心からの半径(m)×角速度(rad/s)²の計算式で導き出せます。身長166cm、体重56kgのブレイカーがトーマス(フレア)を披露すると仮定し、代入してみましょう。トーマス(フレア)は特に脚へ大きな遠心力がかかるため、質量は片足の重さにあたる約9.5kg(体重の17%)に。また、回転中心から脚の重心までの距離は0.6m、回転速度は毎秒1回転とします。結果、遠心力は226N=23kgf(※1)という値に。どの程度の力かと言うと、水が入った一般的なバケツ4個分を持ち上げるときに感じる腕の「引っ張られ感」と同等です。これは、学校の掃除などで使われるバケツに水を満タンに入れたもの×約4個分の重さ! この強い遠心力をコントロールしながら回転しているなんて、すごいことです!

  1. kgf=重さ・力の単位。質量の単位(kg)とは異なるが、地球上ではほぼ同等と考える。

大きな遠心力にも負けない、ブレイカーの並外れた体幹&バランス感覚!

大きな遠心力がかかってもブレイカーが回転を維持できる理由は、ずばり体幹の強さ! 先の例で考えると、回転中心から脚が離れると遠心力も大きくなりますが、体の軸がブレないように回れば飛ばされません。ブレないためには、回転軸のまわりの重さが均等に配置されるようなスタイルをとることも重要なポイント。回転軸(トーマス(フレア)であれば骨盤あたり)の近くは重い、遠いところは軽いというバランスを、一流のブレイカーは感覚的に会得しているわけです。

  • 数値や分析はあくまで仮説に基づくものであり、現実の値とは異なる可能性があります。

SCIENCE FILE No.4

腕1本で体を支えたり、ダイナミックな回転やジャンプを駆使したりと、多彩なトリックを繰り出すブレイキンは、全身の筋肉を使うスポーツです。トリックの中でも目玉であるパワームーブでは、体のどの部位にどれくらいの負荷がかかっているのでしょうか?

トーマス(フレア)の負荷を部位ごとに可視化!

腕だけで体を宙に浮かせ、脚を回転させるトーマス(フレア)は、パワームーブの中でも特に高負荷なトリック。「両手で体を支えながら、脚を大きく振り上げる瞬間」に注目して、体の各部位の負荷をみていきましょう!

回転している物体の負荷はモーメント(回転力)で表され、公式は「モーメント=質量×9.8(重力加速度)×回転半径」です。体重56kgのブレイカーを想定した場合、体全体を約0.3m(※1)の高さで支える腕には約165J、26kgの胴体(※2)を同じ高さに保つのに約76J、19kgの脚(※3)を0.6mの高さまで振り上げるのに約112Jが必要です。合計353Jを部位ごとの比率に換算すると、負荷割合は腕47%、体幹21%、脚31%という結果に。割合だけで見ると、腕が5割近い負荷を担っていることがわかりました! ここで、腕を使う運動の代表として「腕立て伏せ」と比べてみます。腕立て伏せは脚でも体を支えているので、腕が支えている体重は全体の60~70%程度。トーマス(フレア)は胴体や脚は浮いているので、全体重を腕で支えています。加えて、先に出した「回転するための負荷」もかかっているため、腕立て伏せの約3倍の負荷が腕にかかっていると言えそうです。かなりキツいですね!

  1. 回転半径は本来、回転の中心から質点までの距離を指しますが、ここでは床からの距離を近似的に回転半径として扱う。
  2. 体重の約45%と仮定
  3. 体重の約34%と仮定

ブレイキンのトリックは、筋トレやエクササイズの複合技!?

トリックの動きを分解してよく観察してみると、エクササイズや難易度の高い筋トレに似たような動きが多くあります! 例えば、トーマス(フレア)は体操の「あん馬」や筋トレの「Lシット」。フリーズのエアベイビーは、肘で太ももを支えバランスを取っている状態を「サイドプランク」の進化系のようにみることができそうです。単体でも難しい筋トレの動きを高速かつ連続で繰り出すブレイキンは、極めればまさに筋トレの究極系と言えるかもしれません!

  • 数値や分析はあくまで仮説に基づくものであり、現実の値とは異なる可能性があります。

SCIENCE FILE No.5

ブレイキンには、「スーサイドムーブ」と呼ばれるトリックがあります。空中から落下し、足や手以外の部分で着地する場合を指すことが多く、見た目は派手ながらも、痛くてけがの危険があるリスキーな技です。なかでも「胸バク」というトリックは随一のインパクト! 格闘技の大技と比較して、その凄まじさを研究していきます。

着地の衝撃力は驚きの2,138N!
…これってどれくらい?

KOSÉ 8ROCKS所属のSHUVANさんが失敗から編み出したという「胸バク」。バク宙しながらそのまま胸から着地する大技です。SNSで有名になった試合では、なんと身長を超える高さから飛び降りたことも! このとき体にかかる衝撃はどれほどなのでしょうか? 落下距離を1.8mと仮定した場合、自由落下によって体は加速していき、落ちる瞬間には5.94メートル毎分になっています。体重72kgのSHUVANさんがこの速度で胸から着地し、0.2秒で静止したと仮定すると、床に触れる瞬間のエネルギーは72×5.94÷0.2=2,138Nにのぼります。これは、200kgを超える重さのバーベルを支えるときの力と同等! このエネルギーをそのまま胸で受けるとなると、なかなかの衝撃ですね。

「胸バク」に関するSHUVANさんの記事はこちら

さらに、格闘技と“衝撃”を比べてみよう!

2,138Nを格闘技で計算した場合、どのくらいのパワーになるのでしょうか? 選手の体格や筋力にもよりますが、ボクシングのストレートや柔道の一本背負いを受けたときの威力がおよそ2,000Nほどと言われています。つまり、胸バクは格闘技の大技に近い衝撃力があることになります。しかも、「胸バク」は胸から着地で衝撃を受けるため、ガードや受け身をせずに直接大技を受けるようなもの。この大技のあとも踊り続けるブレイカーは、格闘技の選手並にタフなアスリートですね!

  • 数値や分析はあくまで仮説に基づくものであり、現実の値とは異なる可能性があります。

FICTION FILE No.1

背中や肩、頭などを使って連続回転するトリックが数多くあるブレイキン。「ブレイカー=体のどこかで回転している」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。そこで、代表的な回転系トリック、ヘッドスピンによって働く摩擦で火をおこせるのか計算してみました!

キリモミ式×ヘッドスピンの組み合わせがベスト!

火をおこすためには①可燃物②酸素③熱源の3要素が必要ですが、方法はさまざま。今回は、回転摩擦のなかでも「キリモミ式」をピックアップ。木の板の凹みの上に垂直に立てた木の棒を、下に押しつけながら手をこするようにして回転させるおなじみの火おこしです。この場合、「一点集中型の回転」かつ「頭と床の摩擦が強い」ヘッドスピンが最適でしょう。

火をおこすためには、さまざまな理想的条件のクリアが必須!

次に、火をおこす際に必要な条件を考えます。まず頭と床の摩擦面の素材について。頭部への熱伝導を抑えつつ熱を安定的に維持するべく、頭部には耐熱性と摩擦性の高いサンドペーパーなどの素材を張り付けたヘルメットを装着。床には木材などの高摩擦素材と、チャークロス(炭化した布)や木炭などの発火する素材をセットで用意します。また、ヘッドスピンを行う場所は「熱が逃げにくくて、必要な酸素が入り込む程度のコンパクトな空間」を意識すると、より発火の可能性は上がりそうです。

最後に、ヘッドスピンに必要な回転速度と継続時間です。ブレイカーの体重を56kg、木炭(発火点は250〜0℃)の発火に必要なエネルギーを126Jとします。摩擦による熱生成量を求める計算式「摩擦係数(0.3と想定)×垂直抗力(頭にかかる体重分)×滑り距離(1回転での移動距離)×回転数」に代入すると、なんと1.2回転すれば出せる計算に! しかし、実際には熱が床にも頭にも伝わるので、伝熱効率が5%程度になると加味すると…。

結論、理想的条件下では、連続で24回転程度(1秒に0.2回転)ヘッドスピンをすれば火をおこせる可能性があるといえます! 実践する場合は、くれぐれもご注意を…。

  • 数値や分析はあくまで仮説に基づくものであり、現実の値とは異なる可能性があります。

FICTION FILE No.2

風車のように回転することからその名が付けられた、ブレイキンを代表するトリックのひとつであるウインドミル。披露しているブレイカーの近くに行けば、実際に風を感じられるそうです! ひょっとすると、たくさんのブレイカーが集まれば「最強の竜巻」を生み出すことも不可能ではない!? そんな空想を科学的に考察していきます。

国内観測史上最強クラスの竜巻とは!

そもそも竜巻は、どのように発生するのでしょうか。原因はずばり、空気が暖められることで急速に発達した積乱雲。積乱雲に伴う強い上昇気流により発生する激しい渦巻きを竜巻といい、漏斗状や柱状の雲を伴うことが多いです。

竜巻などの突風には、風速を推定する際に使われる尺度「藤田スケール」がありますが、今回は上から3番目の階級にあたるF3竜巻を発生させることにしましょう。F3は、風速70~92m/s(約5秒間の平均)で、これは自動車も持ち上げられて飛ばされてしまうレベル。国内観測史上最強クラスの竜巻と言われています。

約1万世帯が1日に消費するレベルのパワーが必要!?

では、いよいよ計算に移ります! 竜巻の大きさを「半径150m、高さ1,500m、平均風速(v)90m/s、空気密度1.2 kg/m³」と仮定します。これらの数字から体積と質量(m)を求め、運動エネルギー(E)の計算式mv²に代入。竜巻発生時間(t)を60秒と仮定し、必要パワー(出力)の計算式に代入すると、F3の竜巻を発生させるためには、約8.6GWのパワーが必要という答えが導き出せます。これは約1万世帯(戸建ての4人世帯)が1日に消費する電気と同じパワーです! ブレイカー1人当たりがウインドミルで1回転すると100Jのエネルギーを生み出せると仮定した場合、約8,580万のブレイカーが必要という計算に! 人口1.2億人を超える日本で、国民全員が一斉にウインドミルを回り続けるとさらに大きな竜巻が起きてしまう可能性があるのでご注意を…!

  • 数値や分析はあくまで仮説に基づくものであり、現実の値とは異なる可能性があります。
【出典】
気象庁.“藤田(F)スケールとは”. 気象庁ホームページ,
(参照:2024-4-24)

FICTION FILE No.3

誰しもが幼少期に一度はやったことがあるだろう「靴飛ばし」。意外と知らない「モノを飛ばす原理」を学びながら、いくつかの回転系のトリックでシミュレーション&ランキングにしてみました! 「ブレイキン靴飛ばし大会」上位のトリックは、果たしてどこまで飛距離を伸ばせるのでしょうか?

飛距離を導き出してみよう!

飛距離を求める基本的な計算式は「水平方向の飛距離=初速×落下時間」です。イメージをつかむため、スワイプスでの靴飛ばしを例に計算してみましょう!

まずは初速と落下時間を求めるため、ブレイカーの身長を166cmと仮定し、「回転半径」「1秒間の回転数」「靴を飛ばす瞬間の足の床からの高さ」を設定します。スワイプスは肩から真下に下ろした手を軸に回転するので肩から足先までを回転半径として1.0m。1秒間の回転数は1.5回/s、トリック中の足の最高到達点は1.0mと仮定すると、初速=9.42m/s。落下時間=0.452秒とわかります。はじめの式に代入すると、飛距離は9.42×0.452で4.26mと判明! バトル中に靴が脱げて飛んでしまったら、取りに行くのをためらうくらいの距離です。

ほかのトリックでもシミュレーションしてみよう!

スワイプスよりも靴を飛ばせるトリックがあるのか、さらにシミュレーションしてみます。まずは足を大きく振り上げるトーマス(フレア)。回転半径は足先から腰までで0.9m、1秒間の回転数は1.5回/s、足先の到達点は1.2mと仮定します。式に代入すると、4.19m! スワイプスとほぼ同じ結果でした。

お待ちかねの今大会の優勝トリック、エアートラックスのシミュレーションにいきましょう! エアートラックスの半径はおよそ肩から足先までで1.1m、回転時に脚を大きく持ち上げるので最高到達点は約1.5m、回転数は1秒間に2回と仮定します。結果はなんと7.64mで堂々の1位に! 体ごと大きく、ダイナミックに回転するエアートラックスの強さが証明される結果となりました!

  • 数値や分析はあくまで仮説に基づくものであり、現実の値とは異なる可能性があります。

FICTION FILE No.4

ブレイカーの使うトリックの中には、今にも転倒しそうに見える動きが多く存在します。「転倒しそうに見えて転倒しない」仕組みを知り、とっさにトリックに変換できれば、日常生活で思わぬケガをする心配もなくなるかも!?

どんな体勢でも「重心移動」をし続けるブレイカー

「転倒」とは、重心が支持基底面(体を支えている底面)の外に出て体を支えられなくなってしまうこと。普段は重心の位置をうまく移動させることでバランスを保っていますが、誰かとぶつかったり、つまずいたりして思いがけず重心がずれる(支持基底面から外れる)ことで転倒します。逆に、一歩足を踏み出すなど、即座に重心移動して新しい支持基底面を作れれば転倒を防げるということになります!

そこでブレイカーに目を向けると、この「重心移動」が凄まじくうまい。例えばエアートラックスのように回転しながら体を宙に浮かせ続ける場合、手→空中→手→空中と重心を瞬時に移動させています。動きが止まる(倒れる)前に次の支持点に向けて移動させる、ということです。どんなスポーツでも重心移動は大切ですが、ブレイキンがすごいのは、その重心移動を試合中“常に”“瞬時に”行いながら、あれだけアクロバティックなトリックを繰り出し続けるところにもあるんです。

日常の転倒を回避できるトリック3選!

日常生活の「転倒あるある」シーンで使えそうな、ブレイキンのトリックを3つご紹介!

➀階段につまずいて前のめりに転倒寸前…!
→倒れる勢いのまま体を虫のように波立たせて「ワーム」に移行! 滑らかなムーブでそのまま階段をのぼっちゃおう!

➁電車で急ブレーキ、思わず背中から倒れそうに!
→倒れる瞬間、背中を丸めて衝撃を吸収。「ボム」で華麗に回って立ち上がれ!

➂人混みの圧に押されて前のめりに…
→体を小さく丸めて回転しながら背中で着地! 「エリオ」を完璧に決めて恥ずかしさも帳消しに!

  • 数値や分析はあくまで仮説に基づくものであり、現実の値とは異なる可能性があります。

FICTION FILE No.5

とあるブレイカーは、パワームーブの練習中にうっかり足で部屋の壁を壊してしまったことがあるそう。もしかすると、壁よりも硬い鉄板を割ることができたりするのでは…? パワームーブのトリック中の足が引き起こす衝突エネルギーが、どれくらい硬いものまで壊せるのかを計算していきます。

ブレイカーの足先が生み出すエネルギーはボクサー級!?

運動エネルギーは「重さ×速さの2乗」を2で割ることで計算できます。また、回転の速さを求める計算式は「円周率×直径×回転数」。そこで、体重56kg、身長166cmのブレイカーが1秒あたり2.5回転でヘッドスピンなどのパワームーブをしたと仮定してみましょう! 足を広げた体の中心軸から足までの距離は約72cmとなり、周速度は11.30m/s。おおよその片足の重さは10kgなので、合計のエネルギーは1/2×10×(11.30m/s)²=638Jということになります。これは、ボクサーが放つ強めのパンチを超えるエネルギーがあるといえそうです! では、このエネルギーを「パワー」として考えてみましょう。足が何かしらの対象物に0.05秒で力を伝えきる(キックする)とすると、合計のパワーは638J÷0.05秒=12,760Wとなります。

トリックで1mmの厚みの鉄板に穴をあけることはできる?

家電や鉄製の棚などに使われる1mmの厚さの鉄板に直径4cmほどの穴をあける場合に必要な衝撃力は、44,100Nとなります。同じ速度(11.30m/s)で蹴り出す場合、必要なパワーはなんと498,330W! つまり、鉄板にキックで穴を開けるためには、秒間15回転(扇風機と同程度)で回るか、体重が2,000kg(ゾウと同程度)の人が同じ速さで回れば実現できます。かなり難しそう…。

しかし2cmの厚みの瓦であれば12,760Wのキックが繰り出せるブレイカーだと瓦30枚くらいは割ることができそうです! やはりブレイカーの足のパワーはすごいですね!

  • 数値や分析はあくまで仮説に基づくものであり、現実の値とは異なる可能性があります。

RECORD FILE No.1

2016年11月24日、新潟県出身の日本人ブレイクダンサーASHITAKA(五十嵐貴洋)さんが「連続で行ったエルボーホップ最多回数」のギネス世界記録™に挑戦。
187回も連続で成功させるという驚異的な記録を打ち立て、ギネス世界記録に認定。
ブレイキンのトリックの一つであるエルボーホップは、床に肘をついて逆立ちのような状態で体を浮かせるユニークなトリック。

肘だけで体を支えて逆立ちのような状態をキープするだけでも至難の業なのに、その状態で187回も跳ぶことができるなんて信じられません!

187回ともなると並外れた体幹や筋肉、また集中力や執念も必要とされます!
肘ひとつで世界に実力を証明した、驚きのスゴ技記録です!

ギネス世界記録 登録名称:Most consecutive elbow hops (breakdance)
※2025年5月現在

ギネス世界記録に挑戦したい場合は、公式サイトより、申請できます。申請されたのち、各記録の細かいルール等情報が提供されます。 https://www.guinnessworldrecords.jp/

RECORD FILE No.2

スウェーデンのヨナス・ゴスバーグさんがブレイキンのフットワーク「6歩」で501回連続成功という記録を打ち立て、ギネス世界記録™に認定。

記録が作られたのは、2006年11月4日で約20年間記録が誰にも破られていません!

6歩はブレイキンのフットワークの基本となる動きで、円を描くように6歩で1周する技。

501回という前人未到の回数への驚きはもちろん、プロの男性ブレイカーの1回のフットワークの平均時間は、約8.99秒であるといわれており、プロでも1分間で7回程度が平均と言う計算になるにもかかわらず、ヨナスさんは28分17秒でこの記録を達成していることから、1分間で17回のペース、つまり通常の2.5倍の速さでフットワークを行い続けたということもこの記録の凄さの一つです。

この記録は足元を動かし続ける体力とスピード、そして集中力の賜物であり、まさに足元の限界を超えた挑戦であったことがわかります。

ギネス世界記録 登録名称:Most consecutive breakdance 6-step routines
※2025年5月現在

ギネス世界記録に挑戦したい場合は、公式サイトより、申請できます。申請されたのち、各記録の細かいルール等情報が提供されます。 https://www.guinnessworldrecords.jp/

RECORD FILE No.3

2010年10月10日。イタリアのB-BOYであるCico(マウロ・ペルッツィ)さんが、ブレイキンのトリック「ウインドミル」をなんと30秒で50回という驚異のスピードで成功させ、ギネス世界記録™に認定。

ウインドミルとは肩や背中を地面につけて体を回転させるトリックで、脚を大きく広げて風車のように回る姿からその名がついたとも言われます!

ウインドミルは1回の回転に1秒〜1.5秒かかるとされ、30秒間でできても20回-30回ほどのなか、30秒間で50回ウインドミルを行うとすると、1回の回転にかけている時間はわずか0.6秒ほどとなりその速さがわかります!

ただスピードに耐えれば良いわけでもなく、回転による首と股関節への遠心力にも耐えながら、形をキープし続けていることがすごいですね!

風車というより台風クラスのウインドミルで世界を圧倒したCicoさんのスゴい記録です!

ギネス世界記録 登録名称:Most breakdance windmills in 30 seconds
※2025年5月現在

ギネス世界記録に挑戦したい場合は、公式サイトより、申請できます。申請されたのち、各記録の細かいルール等情報が提供されます。 https://www.guinnessworldrecords.jp/

RECORD FILE No.4

2018年11月24日、イタリアのB-BOY、ミケーレ・ガーニョがブレイキンのトリックの一つである「ヘッドスライド」で2.6mを滑走し、ギネス世界記録™に認定。

思い切った助走から両手を離して頭だけを床に接地し全身の動きを使って床を滑る、まるでモップのような高難度のムーブである「ヘッドスライド」。

頭だけで体を支え、逆立ちになることだけでも大変なのにも関わらず、2.6mも頭を滑らせて移動したミケーレさんがすごい!

ユニークな見た目に隠された、超人的な首周りの強さや体幹が成し遂げた驚愕のスゴ技記録です!

ギネス世界記録 登録名称:Longest head slide (breakdance)
※2025年5月現在

ギネス世界記録に挑戦したい場合は、公式サイトより、申請できます。申請されたのち、各記録の細かいルール等情報が提供されます。 https://www.guinnessworldrecords.jp/

RECORD FILE No.5

2015年11月9日、ドイツのモルドシュタインさんはヘッドスピン中に最低38文字以上のSMS(テキストメッセージ)を入力完了するまでの最速記録、56.65秒をマークし、ギネス世界記録™に認定。

「ヘッドスピンだけでもすごいのに、そこでメールを打つなんて可能なのか??」と疑ってしまうほどのユニークな記録。

ヘッドスピンとは、頭を軸に身体を回転させるブレイキンの代表的な技の一つ。

普通、目が回るような技なのにも関わらず、彼はその最中にスマホを落とさず、画面も見失わず、指先で平然とキーボードを叩き続けました!

これは並外れた身体の軸、体幹、平衡感覚によってなせる技。
あなたに届いているメールも、ヘッドスピン中に送られている、、かもしれませんね!

ギネス世界記録 登録名称:Fastest time to type a text message (SMS) on a mobile phone while performing head spins (breakdance)
※2025年5月現在

ギネス世界記録に挑戦したい場合は、公式サイトより、申請できます。申請されたのち、各記録の細かいルール等情報が提供されます。 https://www.guinnessworldrecords.jp/